河合隼雄 著
無意識は自分自身ではなかなか分かりにくいが、存在しているということは感覚としては確かにある。他人から指摘されて、自分ではそんなことはないと思っていたのに確かにそうだなと納得するというようなこともある。
コーチングで無意識にアプローチできれば、ゴールが達成に大いに貢献できるのではないかと考えています。具体的な方法は模索中ですが「言語連想検査」や「シンボル」などはセッションの中で使えるのではないかと思いました。
Ⅰ無意識へのアプローチ
1.無意識のはたらき
本人の意識的な統制力をこえたなんらかの力
2.コンプレックス
ままならぬ人の心→感性のしがらみ(複合体)
言語連想検査→相手の反応した単語と反応時間を書き留めていく(刺激語と反応語)→こだわりにより連想の流れが妨害されると時間が長くなる(意識の円滑性が失われる)
3.心の構造
私とは何か→確証なしに自明として受け入れている
自我→人間の行為や意識の主体→外界の知覚と内的な欲望や感情の認知→経験を記憶として体系化し保存→ある程度の統合性を有する→大きい矛盾をもつことが許されない→自己防衛機能
自我の統制に服さないコンプレックスは反逆を試みる
自我→意識→個人的無意識(一度は意識されながら強度が弱くなって忘れられた、自我が統合性を守るために抑圧した、意識に達するほどの強さはないがなんらかの方法で心に残された感覚的な痕跡の内容)→普遍的無意識(家族的、文化的)
Ⅱイメージの世界
1.イメージとシンボル
イメージが人を動かす→主観的体験→言語的表現と非言語的表現
言語化しがたい部分を描き出す→把握し残された部分
2.心的エネルギー
エネルギーは変遷する→進行は無意識から意識に向かう、退行は意識から無意識に向かう
創造過程で新しいエネルギーが自我にもたらせるが、運び手はシンボル→シンボルの意味が言語化され、自我によって把握されると活力を失いシンボルではなくなる
夢には無意識から意識へと送られてくるメッセージ→シンボルの担い手→意識と無意識の相互作用のうち生じてきたものを自我がイメージとして把握したもの→意識に対する補償機能を有することが多い→意識の盲点をついている
Ⅲ無意識の深層
1.グレートマザー
自然に生じたものをそのまま受け止める→本質において死の受容につながる
2.元型
無意識内にイメージの元となる型が存在する→意識によっては把握しえない仮説的概念
3.影
生きられなかった半面→認めることをできるだけ避けようとする
投影のひきもどし=他人に投影した自分の影を自分の方にひきもどし、自分の無意識にある傾向をどのように生きるかを考える
Ⅳ無意識界の異性像
1.ペルソナと心
ペルソナ=外界に向けて見せるべき自分の仮面→自我は外界との付き合いだけではなく自分の内界との付き合いも考えねばならない
2.アニマ
孤独になったときアニマが出現する→アニマとの接触は危機に陥りやすい
アニマは男性にとっては感情やムード、非合理的なものへの感受性、人や物に対する愛や関係性、無意識に対する開かれた関係などをもたらす→インスピレーション→創造的活動へと結びつく
アニマはペルソナと対立する→男性は弱さや馬鹿げたことを強いる面をもっている
3.アニムス
女性にとって母性とアニムスとが心の中で葛藤を生じることは多い
4.男性と女性
アニムスは意見を好みアニマはムードを好む
意識は両性具有的な方向へ向かっているが実現は不能なのかもしれない
自己実現の道はあれかこれかではなく、あれもこれもである→あれもこれもに手出しすると両方失うことになる
Ⅴ自己実現の過程
1.自我と自己
人間の心の中に対極性が存在し相補的な関係にある
全人格の中心は自我ではなく自己である→自己は心の全体であり中心である→自我と一致するものではなく自我を包含する→自我は自己のはたらきを意識化する→自己はシンボルを通じてのみ知る
2.自己とシンボル
自然はあるがままのものとして自己のシンボルに適している
3.マンダラ
マンダラは自己の象徴であり自己は世界でもあるので世界観を示す
4.個性化の過程(自己実現の過程)
個性化の道程を歩む=自分の内界(無意識界)に目を向ける 共時性はなにとなにが共に起こり、それはどのような意味によって統合しているかという観点から見る→事象全体をとらえて全体的な相を見る(易経)